11月4日から7日まで、神戸でJDDW(日本消化器病学会週間)2021が開催されました。

当院からは、7名(一般演題3名、主題演題4名)が発表を行いました。

演者から、それぞれの発表について報告です。

 

*******一般演題*******

【田邊万葉】★★★優秀演題賞・若手奨励賞★★★

  • セッション:デジタルポスター(消化器内視鏡学会)
  • 演題名:大腸ESD後潰瘍に対する新しい縫縮法”Loop 9”の実行可能性試験

★概要・ひとこと;

本演題でポスター優秀演題賞および若手奨励賞に選出頂きました。Loop9は内視鏡治療後の粘膜閉鎖においてstay sutureの役割を果たす新しい手法で、井上教授が考案されたものです(お風呂で思いついたとおっしゃっていました!)。本法は既存の安価な物品で自作でき、シングルチャネルの鉗子口経由で施行可能で、かつ処置のためのスコープ再挿入が不要であるということが特長であり、本年1月にはEndoscopyPilot studyAcceptされております。全消化管で施行可能ですが、特に深部大腸での有用性は注目すべき点です。

今回は大腸ESD後の粘膜閉鎖で症例を集めてご報告させて頂きました。ESDだけでなく、粘膜下層内視鏡や全層切除の登場により「内視鏡的閉創」の重要性は最近のTOPICであり、今回注目頂けたと考えています。私が発表させて頂いたセッションでは大腸治療後粘膜閉鎖による術後偶発症予防効果などの演題が集まっており、現地では多くの方から直接ご質問やご意見を頂くことができLoop9はとても好評でした。引き続き実臨床で症例を積み重ね、その工夫や開発に向けての知見を深めていきたいと考えています。

 

【福田舞】

  • セッション:デジタルポスター(消化器内視鏡学会)
  • 演題名:大腸がん検診における精検偽陰性の検討

★概要・ひとこと;

大腸内視鏡検査の精度とAdenoma detection rate (ADR)についてお話させていただきました。FIT陽性精検後に発見された異時性ANadvanced neoplasia)は既報通り検者ADRと逆相関関係を示され、大腸がん検診おいて精検偽陰性をなくす為にADRによる精度管理を行うべきだと考えました。自身のADRを知ることで見落としをしないようにと身が引き締まり、今後の内視鏡を行う上でよく意識していきたいと思います。

 

【野村憲弘】

  • セッション:デジタルポスター(肝臓学会)
  • 演題名:高TG血症を伴うNAFLD/NASHに対する選択sPPARαモジュレーターの治療効果の検討

★概要・ひとこと;

血清TG値上昇に伴い,NAFLD合併率が上昇すると報告されています。選択的PPARαモジュレーターであるPemafibrate (PF)は,第三相臨床試験の層別化解析で強いTG低下作用に加え,肝胆道系酵素低下が確認され,今後NAFLD/NASHの治療薬として期待されています。今回我々は,高TG血症を伴うNAFLD/NASHに対するPFの肝障害に対する治療効果を検討し、良好な結果が得られることを確認しました。本学会でPFに関する演題は8題認め、注目の高さを再認識しました。今後も同薬剤の長期の治療効果を検討していきます。また、コロナ禍のため事前にpower pointを音声入りで作成し、当日は質疑応答のみだったので非常にリラックスして発表に臨めました。

 

*******主題演題*******

【國田康輔】

  • セッション:ワークショップ2(消化器内視鏡学会・消化器がん検診学会)

遺伝性消化管疾患に対する内視鏡の役割

  • 演題名:当院におけるリンチ症候群に対するサーベイランスの現状

 

【年森明子】

  • セッション:ワークショップ2(消化器内視鏡学会・消化器がん検診学会)

上部消化管内視鏡診療の新技術《ビデオ》

  • 演題名:新しい内視鏡的創閉鎖法”Loop 9”
  • 概要・ひとこと;

当センターで開発中の内視鏡的縫合法の新デバイス”Loop9”について、上部消化管治療での経験を交えながら、方法と治療成績について報告しました。簡便・安価で、何よりシングルチャネルスコープで完遂できる縫合法として、全消化管で応用可能なデバイスです。ぜひチェックしてみてください。セッション全体を通して、内視鏡診療に関わる新技術や、既存法の応用法などが多数報告されており、ワクワクする内容で、とても勉強になりました。今後も研究・開発を継続して、成果を発信していきたいと思います。

 

【島村勇人】

  • セッション:Strategic International SessionWorkshop)消化器内視鏡学会・消化器外科学会

イノベーションをもたらす内視鏡機器開発(Development of innovative endoscopic devices

  • 演題名:Association between endoscopic pressure study integrated system (EPSIS) and high-resolution manometry in patients with gastroesophageal reflux disease

★概要・ひとこと;

当センターにて開発中の内視鏡的内圧測定統合システム (Endoscopic pressure study integrated systemEPSIS)について、臨床応用の有用性について報告しました。EPSISは、胃の内圧を測定することで胃食道逆流症(gastroesophageal reflux diseaseGERD)の診断を行う新規内視鏡機器です。この新たに開発された診療機器は、内視鏡的に下部食道括約筋(胃と食道をつなぐ部分)の機能を評価できるということを実証した内容です。今後もEPSISの有用性を実証していき、安全に簡便に活用できるデバイスとして開発を進めてまいります。本セッションはMedical Tribuneの記事にまとめられておりますのでご参照ください。イノベーションをもたらす内視鏡機器開発(Development of innovative endoscopic devices)|学会レポート|医療ニュース|Medical Tribune (medical-tribune.co.jp)

 

【鬼丸学】

  • セッション:International SessionSymposium)消化器内視鏡学会・消化器外科学会

内視鏡低侵襲治療の新たな挑戦(New challenges for minimal invasive endoscopic treatment

  • 演題名:Current status and future perspective of submucosal endoscopic surgeries for esophageal benign diseases

★概要・ひとこと;

このセッションは内視鏡低侵襲治療のinternational sessionで、東京ライブ・Endoscopy OneでもおなじみのAmit Maydeo先生やStavros Stavropoulos先生、Philip Chiu先生ら海外の著名な先生方のほか、国内の内視鏡治療をリードする5施設の代表の先生方とともに演者として参加させていただきました。私は上記演題で、江東豊洲病院で行っているPOEMPOEFPOETZ-POEM、憩室切除を軸に治療成績と現状について報告させていただきました。このセッションで現在の国内外の内視鏡治療(肥満治療や全層切除など)の現状を知るとともに、江東豊洲病院の現在地が最先端を走っているものであることが再確認でき、今後も学会・論文を通して当科の取りくみを発信する一助になれたらと思いました。またセッションを通じて日本医師の英語力もひと昔前より随分と向上しているように感じました。今後発信力、国際力を高めるためにも語学力の必要性を改めて感じました。