昭和大学 江東豊洲病院 消化器センター

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ご挨拶|教授(消化器内科) 伊藤 敬義

伊藤 敬義いとう たかよし

教授(消化器内科)

消化器内科診療科長
内科専門研修プログラム統括責任者

患者さんへのメッセージ

当センターは開院時に昭和大学4病院の外科、内科からスタッフが集まりましたが、6年が経過した現在は内科・外科の垣根のない消化器センターとして確立されています。当センターは食道アカラシアの内視鏡治療が全世界的に注目され、全国から患者がやってきます。同時に消化器腫瘍の内視鏡治療、最近では難治性逆流性食道炎に対する外科治療も行っております。国内外からは内科医、外科医、内視鏡医が内視鏡治療を学びに留学に来ており活気あるセンターとなっております。
当センターの役割は、地域が必要とする急性期疾患を常時受け入れ可能にすること、大学病院でなければ対応できない難治性疾患治療を積極的に行うことです。当院では連日消化管出血、閉塞性黄疸、胆管炎、急性肝炎などの緊急入院があります。このニーズに答える病院は城東地域に少ないのが現状で、近隣医療機関の皆様にも認知され始め多くの急性期患者をご紹介頂いています。また難治性疾患とされる重症急性膵炎や、最近では急性肝不全昏睡型にもICUスタッフや腎臓内科など他領域の診療科と連携し対応可能となっております。
私の専門は肝疾患で、これまで多くの肝疾患患者の診療にあたってきました。特にC型肝炎は治療薬が進歩し、高い奏功率が得られ副作用も少なく、高齢者や合併症を持つ患者にも積極的に治療を行っております。水曜日には肝臓外来を担当し、ウイルス肝炎、肝硬変、肝癌だけでなく自己免疫性肝疾患、NASH、肝ヘモクロマトーシス、Wilson病など診断が難しい症例も多くご紹介いただいております。疾患についての詳細は本ホームページの疾患別解説をご参照ください。
当消化器センターの一番の強みは内科・外科が同一医局であることで、各疾患の内科治療から外科治療への移行が速やかである点が挙げられます。特に胆石、胆嚢炎や腸閉塞、急性虫垂炎、消化管穿孔などは内科医、外科医の共同の診療が不可欠です。また周術期の予期せぬ合併症、術後肝障害や胆汁・膵液瘻などは内科医も内視鏡的ドレナージなどで診療に協力します。また肝癌などの局所治療については施設毎にラジオ波焼灼療法中心の病院、外科切除が多い病院など偏りが多いことがあります。当院では肝癌の局在や患者の全身状態を検討し、患者さんに最適な診療を提供しています。これからも地域医療、先進医療に積極的に取り組んでいきたいと思います。

新興感染症を前にして

2020年の東京オリンピックの年は図らずも新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との戦いの年となりました。年が開けてから中国武漢から未知の致死的な呼吸器疾患を引き起こすコロナウイルス肺炎の流行が連日報道され、WHOからもパンデミック(世界的な流行)と宣言されました。消化器センターの医局員も当院の発熱外来を隔日で担当し、発熱患者への診療、COVID-19の原因であるSARS-CoV-2感染を診断するためのPCR検査用検体採取などに対応しています。
新興ウイルス感染は抗菌薬が無効で、抗原や抗体を検出する診断キットも利用が制限されるため標準感染予防策と呼吸管理などの対症療法が中心となります。ただこれまでも人類は天然痘ウイルス、ポリオなどのウイルスをワクチン開発によって根絶させ、約30年前の新興感染症だったHIVも複数の抗ウイルス薬開発によって治療法が確立しています。
消化器領域では肝臓疾患の半数はウイルス感染が原因です。肝硬変、肝癌の原因となるHBVは抗原抗体系での診断やワクチンが確立し、WHOが1992年に「世界中すべての子供にHBVワクチン接種を」と呼びかけ、日本でも対応は遅れましたが2016年から定期接種が始まっています。また現在のHBV持続感染者にはHIVの逆転写酵素阻害剤が有効であることから、ETV、TAFといった抗HIV薬として開発された薬剤による治療が行われています。この治療薬、またワクチン政策によってHBV感染に起因する肝硬変、肝癌は減少すると予想されます。
一方で肝癌の原因の半数を占めるHCVは1989年にカイロン社が遺伝子クローニングという当時初の技術で発見しました。HCVは血液中のウイルス量が非常に少なく、ウイルスの検出は現在のSARS-CoV-2同様にPCR法に頼っていました。PCR法はノーベル賞を受賞した核酸増幅法で、微量なDNA、RNAを検出可能にします。一方でHCVやSARS-CoV-2のようなRNAウイルスは体液に含まれるRNA分解酵素の存在や逆転写酵素を用いて一度RNAからDNAに合成するステップが必要なことから検査法が少し煩雑です。検査に時間がかかることと検体が少なく、サンプル調製の過程でウイルスRNAをロスして偽陰性になることがあります。現在のリアルタイムPCR法は検査工程を簡略化し、また内部コントロールを用いて、ウイルス由来の核酸増幅状態をモニターし、定性と定量を同時に行います。HCVの完全培養系はHCV発見から16年後に国立感染症研究所の現所長の脇田先生が開発に成功し、その後多くの抗ウイルス薬(DAA製剤)が開発され、培養系で評価されました。現在は97%の寛解率でウイルス排除が可能です。DAAは非代償性肝硬変の患者にも使用可能で、当センターでも多くのHCV患者を治療しています。
現代のウイルス学、遺伝子工学分野は新興ウイルスの発見によって日進月歩してきており、COVID-19も簡便な診断系、治療薬の開発、また有効な既存抗ウイルス薬の治験などが早急に進むことと期待しています。

医学部学生・研修医へのメッセージ

私は内科専門研修プログラム統括責任者でもあり、毎年多くの内科専攻医を当院で教育する役割があります。2019年からは専門医機構が大都市圏の医師数を調整する”シーリング”が始まり大きな不安を感じました。これは東京都内の基幹病院の専攻医研修責任者は皆、頭をいためたことと思います。令和2年度の専攻医も東京都の昭和大学病院と当院でシーリングがかかり、本院の内科プログラムでは希望が叶わない専攻医が多く出ました。幸い当院の内科プログラムは希望者5名全員を採用できましたが、今後はシーリングのない県の連携病院に一時的に基幹病院をお願いするなどの対策など必要になります。過去3年間の消化器内科サブスペシャリティの専攻医は2018年度3人、2019年度3人、2020年度4人入局しております。また連携病院のあそか病院、ひたち医療センター、今給黎総合病院、会津中央病院、河北総合病院に専攻医がローテーションしております。今後、限られた人数の中で優れた内科専門医、またその後の消化器病専門医、肝臓専門医、消化器内視鏡専門医の育成に取り組んでいきます。
江東豊洲病院の消化器センターでは定期で消化器疾患合同カンファレンスを行っています。このカンファレンスは消化器センター、腫瘍内科、病理診断科、放射線科などが参加し、令和2年3月で第34回となりました。関連診療科の先生方には心から感謝しております。最後に近隣の医療機関との連携が必要なことは言うまでもありません。専門分野毎に毎月のように地域連携の研究会を行いつつ、消化器センター全体の行事として令和元年9月に江東豊洲消化器カンファレンス、11月には東京湾岸消化器懇話会を開催しました。今後も一層の地域医療連携と併行し、卒後教育、また医学研究の充実を図っていきたいと思います。

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江東豊洲病院 消化器センター

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