昭和大学 江東豊洲病院 消化器センター

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対象疾患|胆道・脾臓

胆道・膵臓の疾患

胆膵疾患に関しても、他のグループ同様に内科医・外科医が一つのチームを組み、患者さんにとってベストと考えられる治療を提供しています。

図1 胆道、膵臓、十二指腸と周囲臓器

胆道は、肝臓で作られた胆汁が十二指腸に排出されるまでの全ての経路を指します。胆汁は肝臓の肝細胞で生成される消化液で脂肪の消化吸収を助ける作用を持ちます。
膵臓は、胃の後ろに位置し、長さ約15cm・厚さ約3cmの大きさです。膵臓はアミラーゼ、トリプシン等の消化酵素を十二指腸へ分泌する外分泌作用とインスリンやグルカゴン等のホルモンを血中へ分泌する内分泌作用を持ちます (図1)。
以下、代表的な疾患をご説明します。

1)胆石症

胆道に石(結石)ができる病気を胆石症といいます。結石の場所によって肝内結石、胆嚢結石、胆管結石に分類されます(図2)。

図2 胆石症(肝内結石、胆嚢結石、胆管結石)

血液中のコレステロールが増加すると、胆汁中のコレステロールの割合が増加し、次第に溶けきれなくなって結石となったものがコレステロール結石であり、胆石症の大半を占めています。
胆石のリスクとして「5F」と呼ばれるものがあり、①40歳代(Forty)、②女性(Female)、③肥満(Fatty)、④白色人種(Fair)、⑤多産婦(Fecund)の5つを指します。
胆嚢結石による胆石発作では右の肋骨の下やみぞおちの周辺が痛くなるだけではなく、結石が胆管に落下しはまり込んでしまい、黄疸や胆管炎、膵炎を引き起こす事があります。

2)急性胆嚢炎

急性胆嚢炎は胆嚢に生じる急性の炎症性疾患です。胆・膵疾患において最も多い病気です。胆嚢炎の多くは前項の胆嚢結石(胆石)が原因となります。胆石は健康診断など行われている腹部超音波検査などで診断されます。胆石症の有病率は一般人口の10%程度とされ、50、60歳代で最も多く、女性は男性より2倍程度のリスクがあります。その他のリスク因子としては肥満と妊娠・多産などがあります。腹痛や発熱などの症状のある有症状胆石症は手術が治療になります。胆石症による痛み発作は1回生じると何度も繰り返すことが多い症状で、炎症が強いと胆嚢壁が腫脹し、周囲組織に癒着します。
急性胆嚢炎は進行すると、胆嚢の壊死、穿孔(胆嚢に穴が空くこと)、腹膜炎(腹部全体に炎症が広がること)、胆嚢周囲膿瘍(胆嚢の周りに膿がたまること)、敗血症(全身の血液に細菌が拡がること)、ショック(意識が朦朧となる、血圧が下がるなど)の合併を引き起こし、致命的となる可能性があり、早期に治療することが重要です。
急性胆嚢炎を発症した場合は、早期に手術し炎症を起こした胆嚢の摘出が必要であることが知られていますが、中には合併した胆管炎・膵炎治療のため内視鏡的処置を優先する必要がある場合も多いです。また高齢者や持病を持つハイリスク患者では胆嚢ドレナージなどの内科的治療を先行する場合もあります。
当センターでは、外科医と内科医が同一グループで診療しているため、こういった疾患を最も得意としております。一人ひとりの患者さんに対して外科的及び内科的治療で最善と考えられる方法、また順番を選択し、迅速で安全に治療を行います。

【外科的治療】

胆石を合併した急性胆嚢炎では胆嚢摘出術が必要です。当院ではほぼ全例腹腔鏡下胆嚢摘出術を行っています。また急性胆嚢炎の症状がなくとも、頻回に胆石発作を起こす患者にも胆嚢摘出術を行います。また無症状胆石の場合も将来的に腹痛症状が出て、手術が必要となるケースが20~40%と報告されており、患者の希望があれば相談して発症前に手術を行うこともあります。発症前の炎症がなく、周囲との癒着が少ない状態で手術できるため、手術自体のリスクが低く、より安全に行えます。

☆腹腔鏡下胆嚢摘出術について

手術前日に入院し、翌日に手術を行います。手術翌日には、食事がはじまり、シャワーも許可されます。腹腔鏡手術はからだの回復が早く、予定手術の場合は、術後3日目に退院となります。また、手術痕ができるだけ残らないように工夫しております。例えばおへそのみを切開する方法(単孔式手術)、特別に細く加工した道具を用いる方法(Reduced port surgery)、また患者さんの痛みや整容性の苦痛を少なくする工夫も行っています。

【内科的治療】

前述したように急性胆嚢炎の患者さんの中にはすぐに手術ができない方もいます。具体的には発症から時間が経ちすぎている方、心臓や肺に持病があり全身麻酔のリスクがある方、脳梗塞後や高齢で寝たきりの状態にあり手術後の復帰が難しい方、抗血小板薬や抗凝固薬など血液さらさらにする薬を多剤飲んでいる方など様々な要因により手術ができないケースがあります。そういった患者さんに対して手術より侵襲の少ない経皮的、内視鏡的にドレナージ治療を行っています。これらの治療で、胆嚢炎の急性期を離脱し、安全な時期に手術につなげることができます。手術自体ができないハイリスク患者には急性期の治療後に再発予防目的で胆嚢から十二指腸への内視鏡的ドレナージ治療も行っております。

☆経皮経肝胆嚢ドレナージPercutaneous transhepatic gallbladder drainage:PTGBD

右のわき腹から腹部超音波で胆嚢の位置を確認しながら針を刺し、X線透視下でドレナージチューブを留置する手技です。

① 局所麻酔を体の表面に十分に投与し、痛みが消失したのを確認した上で18G(1.2mm)の針を刺し、針の先端を胆嚢内まで刺します。

② そこから胆汁の排出を確認した後、X線透視下で針より細く柔らかいワイヤーを慎重に胆嚢内に留置します。

③ その後針を抜いてワイヤーのみ置いた状態で、プラスチックチューブを挿入します。チューブの先端が胆嚢内に留置できたのを確認してワイヤーを引き抜きます。

④ 最終的に脇腹からプラスチックチューブが出た状態で、持続的に胆嚢内の膿を排出できる状態になります。
細い針で行うため痛みや出血が少なく、また処置時間も短く15分程度で行えるため、早く安全に処置することができます(図3)。

図3 経皮経肝胆嚢ドレナージ(PTGBD)

☆内視鏡的経乳頭胆嚢ドレナージEndoscopic transpapillary gallbladder drainage:ETGBD

内視鏡を用いて、内瘻化(体の外にチューブが出ておらず、体内にチューブを置いてくる状態)を行います(図4)。

① カメラを十二指腸まで挿入します。

② 胆汁の出る乳頭部にカテーテルを挿入し、胆管にカテーテルを挿入します。

③ 胆管のカテーテルからワイヤーを用いて胆嚢部分までワイヤーの先端を進めます。

④ ワイヤーを残してカテーテルを抜去し、チューブを留置してワイヤーを引き抜きます。

⑤ 乳頭からチューブが出た状態で、胆嚢の膿が十二指腸に排出される状態になります。

前述の通り、手術不可能なハイリスク症例に対して急性胆嚢炎の治療を行うことができます。また内視鏡で行うため体の外に傷をつくらないこと、鎮静剤下で行うため眠っている間に治療可能であり患者さんの負担が少ない治療法です。この手技は胆管結石の手技に比べてやや難しいとされていますが、当院ではこの手技に精通した内視鏡専門医が行っているため多くの患者さんでこの処置を行っております。またチューブ閉塞予防に対しては定期的(約3ヶ月毎)にチューブ交換を行います。

図4 内視鏡的経乳頭胆嚢ドレナージ(ETGBD)

3)胆管結石・急性胆管炎

胆管に胆嚢内の胆石が落下、もしくは胆管内で生成した胆管結石が胆管内に留まった状態を胆管結石症といいます。無症状の場合もあり、CT等の画像検査で偶然発見される場合があります。
急性胆管炎は胆管結石やがん等によって胆管内の胆汁流出が悪くなり、細菌感染を合併し炎症を起こす病気です。胆管内の炎症が増悪すると急性閉塞性化膿性胆管炎の状態となり、胆汁内の細菌が血液中に流入し敗血症やショックを併発します。また感染胆汁が膵管内に流入すると胆石性急性膵炎を合併し重篤な状態になる事があります。そのため当センターでは急性胆管炎に対して、受診後早期に治療(内視鏡的十二指腸乳頭切開術及び内視鏡的胆道ドレナージ術)を行っています。
胆管結石が胆管炎の原因の場合は、炎症が沈静化した後に結石を十二指腸にかき出す治療(採石術)を行います。多発結石や巨大結石に対しては内視鏡的十二指腸乳頭ラージバルーン拡張術(図5)を行い、胆管の出口を広げてより安全な採石術を行っています。胆管結石が大きく固く、また多発結石で内視鏡的な治療抵抗性の場合は腹腔鏡下手術による胆嚢摘出術と総胆管切開による結石除去を同時に行っています。
この病気も前述した胆嚢結石が元々の原因であることが多く、再度落下する確率が高いため、内視鏡治療後に胆嚢摘出術が必要になります。当センターでは内科医と外科医が合同で診療にあたっており、内科的治療から外科的治療まで一連の流れでスムーズに治療を行います。

図5 多発総胆管結石に対する内視鏡的十二指腸乳頭ラージバルーン拡張術

4)急性膵炎・慢性膵炎

急性膵炎は、膵臓の急性炎症で、原因はアルコール性と胆石性が大半を占めています。急性膵炎の症状は、上腹部痛や背部痛、嘔吐、発熱等ですが、重症化すると重症急性膵炎という別の病態となります。重症急性膵炎は新型コロナ感染症でも問題となっているサイトカインストームの状態を合併し、呼吸不全、腎不全、膵壊死などの全身合併症をきたします。
急性膵炎は、血液検査と造影CT検査で診断します。主な治療として絶飲食による膵臓の安静と、十分な量の輸液を行います。腹痛に関しては、鎮痛剤を投与します。膵炎により、活性化した膵酵素で膵臓自身が破壊されるのを抑えるために、蛋白分解酵素阻害薬という薬を使用します。
膵炎が収まった後に膵臓内や周囲に仮性囊胞という液体(主に膵液や浸出液)の入った袋が発生する場合があります。この仮性囊胞は、感染や出血を起こした場合、また膵管と交通して増大した場合には膿や血液、嚢胞液のドレナージが必要になります。膵臓の壊死した組織に対してはネクロセクトミーという壊死組織を除去する手術が必要になる事があります。

慢性膵炎は、膵臓に起こる慢性的な炎症です。原因は、男性では飲酒が最も多く、女性では飲酒と原因不明の場合が多いです。この病気は常習飲酒などで膵炎が粘稠となり膵炎を繰り返します。反復する炎症のため膵臓の中心を通る膵管という管が細くなり、膵管内に膵石ができ、膵液の流れを悪くし慢性の膵炎のため腹痛や背部痛を生じます。
治療は禁酒を徹底し、痛みに対しては鎮痛剤を使います。膵酵素の活性化作用を和らげるために、蛋白分解酵素阻害薬を使用します。膵管が細くなっている場合にはプラスチックステントの留置や、バルーンなどを用いて拡張を行う事もあります。

図6 膵炎

5)膵嚢胞

膵炎や、外傷をきっかけに膵臓に嚢胞という液体が溜まった袋が生じる事があります。嚢胞が巨大化してくると腹痛や腹部膨満感、背部痛の原因になり、胆汁の通り道である胆管を圧迫して黄疸が出現する事があります。当院では超音波内視鏡とX線透視を併用しながら、胃と膵嚢胞の間にチューブを留置して嚢胞の内容物を排出する治療を行っております(図7)。

図7 膵嚢胞に対する超音波内視鏡下嚢胞ドレナージ(EUS-CD)

6)胆道がん(胆管がん、胆嚢がん、乳頭部がん)

胆管、胆嚢、乳頭部(胆管と十二指腸の境界)のいずれかに発生したがんを胆道がんといいます。好発年齢は60~70歳で、男性では胆管がん、女性では胆嚢がんの頻度が多くなっています(図8)。

図8 胆管がんのCT画像

胆管がんのリスク因子としては、膵・胆管合流異常症や、原発性硬化性胆管炎、肝内結石、総胆管拡張症などが知られています。胆嚢がんは、胆管がんと同様の膵・胆管合流異常症や、胆嚢ポリープ、肥満、高脂血症、メタボリックシンドローム等がリスク因子と報告されています。
乳頭部がんのリスク因子は特定されていません。
胆道がんの初期は無症状の場合もありますが、がんが進行すると腹痛や全身倦怠感等が見られます。さらに胆管を閉塞するようになると黄疸が出現し、皮膚のかゆみ、灰白色の便、褐色尿が出現します。細菌感染を合併すると、発熱や腹痛といった胆管炎の症状が認められます。
胆道がんが疑われた場合には、血液検査や画像検査(腹部超音波検査・CT・MRI・内視鏡検査等)により診断を行います。診断確定後は、外科的切除が可能な場合は早期に手術を行います。一期的に根治切除することが難しい場合には、腫瘍内科と連携し化学療法を行っていきます。また、胆道がんによる胆管狭窄に対しては、内視鏡でステント(金属・プラスチック 図9)を留置し、胆管炎や黄疸を予防します。

図9 胆道がんによる胆管狭窄に対する胆管金属ステント

7)膵がん

60歳以降、男性に多く発生する、膵臓の悪性腫瘍です。リスクとしては、喫煙、飲酒、糖尿病、慢性膵炎や、膵管内乳頭粘液性腫瘍といった嚢胞性の膵疾患が挙がります。
膵がんは初期には腹痛や黄疸といった症状が出にくく、転移しやすいため、発見された時にはすでに進行した状態の事も珍しくありません。
血液検査・各種画像検査で診断を行います(図10)。

図10 膵がんのCT画像

必要に応じて、超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)で組織を採取し、病理診断を施行しております(図11)。

図11 膵腫瘍に対する超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)

診断確定後は、胆道がんと同様に、外科的切除が可能な場合は早期に手術を行います。膵がんは悪性度が高く、腫瘍切除後も高頻度に再発し、長期生存率が他のがんより低いため、生存期間を延ばすためいくつかの化学療法や化学療法と外科的切除を組み合わせた治療の臨床試験が行われています。当センターでも、参加していた多施設共同研究※では、術前化学療法の優位性が証明されており、それに従い、細胞学的な診断がついた時点で、化学療法を導入し、その後外科切除を行うようにしています。また、外科的切除が難しい場合には、腫瘍内科と連携し、化学療法を中心とする治療を行います。
また、膵臓腫瘍の部位や悪性度によっては、より低侵襲な手術である、腹腔鏡下での手術も施行しております。

※ Prep-02/JSAP-05 膵がん術前治療研究会

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